どうしてサイト・ドメイン統合が必要になるのか
企業においてはサービスごとにそれぞれのドメインでサイトを運営していたり、個人ではアフィリエイト運用などでジャンルごとにサイトを分けていたりと、複数のサイトを所有するケースは少なくありません。
サイトを複数運営することによって、それぞれのサイトで専門性が上がるなどのメリットはあるものの、その分運営に大きな手間がかかるというようなデメリットも存在します。
また、分けて運営していたサイトのうち、どれかがGoogleアルゴリズムのアップデートで大きく影響を受け、検索順位が下落してしまうといったことになると、手が回らずに放置してしまうといったことにもなりかねません。
そのほかにもPC版サイトとスマホ版サイトで分けていたものをひとつにまとめるというのもサイト統合に当たります。
現在では「モバイルファーストインデックス」というスマホ版サイトを中心とした評価になっていくことから、スマホ版サイトと統合することでSEOに効果が出る可能性があります。
このように、運用コストの問題やSEOの関係上などといった点から、時にはサイトの統合が必要になることがあります。
ただ、サイト統合にもメリットはありますが、その分デメリットが生じる場合もあります。
本記事ではサイト統合の手順から詳しいメリット・デメリットについて解説していきます。
サイト統合の基本的な手順・方法
サイトやドメインの統合・移管を行う場合は、主として2つの方法になるでしょう。
ひとつは完全新規に作り直す方法、もうひとつはメインとなるサイトにコンテンツを移植する方法になります。
では、それぞれの手順について、簡単に説明します。
新規でサイトを作り直す
完全新規の場合はその通り、ドメインを新たに用意して、統合先のサイトを構築することになります。
新規で作る場合、統合元となるサイトすべてからコンテンツを移し、加えて新規サイトの設定も行わなければならないため、非常に多くの作業が発生します。
ただ、新ドメインに合わせてサイト名称の変更なども同時に可能となるうえ、それぞれのサイトの仕様にあまり関係なく作業が進められます。
新規で設計したサイトの形さえ作ってしまえば、あとは単純作業でコンテンツを移していくだけなので、作業自体の難易度はそこまで高くありません。
コンテンツのみを移植してリダイレクトする
もう一つの方法であるメインサイトへの移植に関しては、統合元のサイトコンテンツを移して、リダイレクトの設定を行う程度で済みます。
非常に少ない作業で進めることができるものの、統合元のサイトで使用しているCSSや画像のサイズは、統合先のサイトとは異なっていることが多いので、細かな調整作業が数多く出てくると思われます。
もしphpやJavascriptの追加・調整も出てくるとなると、専門的な人員も必要となるため、新規でサイトを立ち上げてまとめる方がスムーズである場合もあるでしょう。
完全新規の方がリスクも少なく、おすすめ
コンテンツを移植する方法の方が、作業量も少なく、コストもかからないように見えますが、移植先サイトとの細かな差異が多くなり、結果的には新規でサイトを作るよりも時間がかかってしまったということも少なくはないでしょう。
対して、サイトを新しく立ち上げて統合していく方法は、作業量の多さがデメリットとして大きく感じられますが、それ以外にデメリットはほぼありません。
また、一度サイト構造やブランディング戦略も見直すことのできる良い機会にもなるので、おすすめです。
サイトを統合する場合は作業量だけで考えるのではなく、統合時にどのような支障が出る可能性があるか、名称など変更する必要はないかなど、さまざまな観点から考えて、方法を決めるようにしましょう。
複数のサイトをひとつにまとめるメリット
サイトを統合することによるメリットとしては、主にコストダウンやSEOの面が強くあります。
他にも異なる企業やサービスであれば、統合することによってブランドの確立・強化といった戦略に役立つという側面もあるでしょう。
それでは実際にどのようなメリットがあるのかについて、解説していきます。
運用・更新の手間が減る
基本的なことですが、サイトをひとつにまとめることで作業を一か所で行えるようになることはメリットになります。
もし他のサイトでは手動で更新していた内容も、まとめた先のサイトではシステム化して自動更新できるようにしてあれば、そのシステムを流用することでより手間を削減することも可能です。
特に古いバージョンのPHPなどを使用していたサーバーで運営していたサイトであれば、統合することがサーバー環境の更新にもつながるので、これまで実装できなかった機能を追加することもできるようになる場合もあるでしょう。
ほかにも、複数のサイトをそれぞれの担当者が管理しており、サイトの仕様を各々でしか把握できていないという属人化した状況でも、統合することによって管理を簡素化することも可能です。
以前では複数人で運用・更新が必要だったものが、統合後は最低でも1名で作業できるようになるので、人員的なコスト削減にもつながります。
キーワード増加によるSEO効果
こちらは異なるジャンルのサイトをひとつにまとめた際に生まれるメリットです。
例えば、それぞれのサイトをひとつのジャンルに絞った専門サイトとして運営しており、そのジャンルにおけるターゲットキーワードである程度の検索順位を獲得して表示されていた場合、統合後でもそのキーワードで表示できる可能性があります。
理由としては、統合される側のサブサイトで獲得したキーワードを統合の軸となったメインサイトへ引き継ぐ形になるためです。
これにより、これまで表示されなかったキーワードでも表示されるようになるので、サイトへの流入が増えることが期待できます。
ただ、後述しますが、あまりに大きく離れたジャンルのサイトを統合した場合には専門性が失われてしまい、かえってサイトの順位が下落してしまう可能性があります。
また、こちらも後ほど詳しく解説していますが、似通ったジャンルのサイトでもコンテンツで重複している部分が多ければ、お互いのコンテンツがキーワードを取り合ってしまう状況になる恐れもあります。
キーワードが増加するというメリットだけではなく、慎重に対処しなければデメリットも生じてしまうことは理解しておいてください。
ペナルティへの対応
運営しているサイトのうち、Googleからのペナルティをドメインが受けてしまった際の対処としてサイト統合を行うこともあります。
ペナルティを受けてしまうと、順位が大きく下落してしまい、また解除はできるもののペナルティ前と同じ状態には戻りません。
ただ、ペナルティを受けたのは「ドメイン」であり、「コンテンツ」ではありません。
そのため、ペナルティサイトで使用していたコンテンツをメインとなるサイトに移して使い続けることが可能です。
注意点として、コンテンツが原因となったペナルティであった場合はその限りではありません。
低品質なコンテンツを多く公開しているなどのサイトがペナルティの対象になるとも言われていますので、コンテンツを移す場合には今一度サイト全体の見直しや記事の品質向上、正しい情報が記載されている良質なもののみを移すようにしましょう。
ブランドの統合・SEO評価の集約
企業におけるケースが多いですが、サービスサイトを軸にコンテンツサイトを統合させることで、サービスサイト自体を検索上位に上げるという例もあります。
こちらも同様にキーワードを引き継ぐ形での流入増が期待できるうえ、サービスサイトに関係するコンテンツを入れたことで、軸となったサービスサイトの評価も上がることが期待されます。
また、同じ企業がまったく別のドメインで運営していた各種サービスを集約してひとつの名称のグループにすることで、SEO評価があまり得られなかった一部のサービスサイトの順位を底上げさせるなどといった目的にも活用できます。
作りとしては、各種サービスにつながるハブサイトを作成し、そこからサブドメインでサービス用のサイトがあるというような形になるでしょう。
サービスのグループ化を目的とした統合はSEOの観点だけでなく、ブランド力の強化を目的に行われることもあります。
名称自体をひとつにまとめることで、それぞれの名称がキーワードとなって散らばっていた検索ボリュームが集約されることで、より幅広い認知と流入が期待できます。
サイト統合で生じるデメリット・注意点
多くのメリットがあるように見えるサイト統合ですが、統合することで生じるデメリットやリスクも存在します。
異なるジャンルや構造のサイトをひとつにまとめるときはもちろんのこと、似通ったジャンルのサイトでも注意が必要です。
どのようなデメリットがあり、何に気を付ける必要があるのかはきちんと理解しておきましょう。
専門性が曖昧になる可能性がある
異なるさまざまなジャンルの専門サイトをひとつにまとめたポータルサイトにするというような目的のサイト統合もあるとは思われますが、このような場合、これまで上位表示ができていたキーワードで順位が下落してしまう可能性もなくはありません。
その理由として、「何の専門サイトなのかがわからなくなって、評価が下がってしまった」ということが考えられます。
それぞれのサイトではひとつのジャンルに絞って運営していたものを、多くのジャンルを持つ巨大サイトの一部分にしてしまったことにより、サイト全体での専門性が失われてしまうのです。
特にサイトのトップページが上位表示されていた場合は影響が大きいでしょう。
その代わり、キーワードの獲得数も増えてサイトの規模自体も大きくなったことから、コンテンツが評価されれば、そのコンテンツで上位表示させることも難しくはありません。
統合によって順位が下落してしまったキーワードを見つけた際には、そのキーワード用のコンテンツを作成したり、カテゴリを充実させて専門性を再度高めたりすることで、取り戻せるかを試してみましょう。
コンテンツの重複に注意
重複する内容が多いままでコンテンツを移してしまうと、獲得キーワードの食い合い(キーワードカニバリゼーション)が起きたり、重複コンテンツとして評価され、元々あったコンテンツも移植したコンテンツも順位が下落したりすることがあります。
似通ったジャンルのサイトを統合する場合には、コンテンツが大きく似通っていないかを注意するようにしましょう。
確認するためにはコンテンツのチェックだけではなく、どのようなキーワードで表示されているのかもサーチコンソールなどで調査して、コンテンツを移すだけで良いのか、それとも既存部分と合わせたリライトを行うかを判断するようにしてください。
リダイレクトや内部リンクの設定を忘れずに
サイト統合時にはただコンテンツを移すだけではなく、URLに関する設定も必要になります。
統合後は基本的にサイトを閉鎖することになるとおもわれますが、検索エンジンでは当分の間、統合元のコンテンツも表示されています。
もし何の処理もしないままでいると、移植した後のコンテンツが表示されるまでは、ユーザーはエラーページにアクセスすることになってしまいます。
また、移植後のコンテンツは新規で改めてGoogleに評価される形になるので、検索順位が出るまで時間がかかります。
そのため、統合時には「統合元のサイト」から「統合した先のメインサイト」へのリダイレクト処理を欠かさず行うようにしましょう。
統合しないコンテンツがある場合でもエラーページで放置せず、関係する内容のページへリダイレクトすることをおすすめします。
リダイレクトの期間は最低でも1年
ちなみに、移植元サイトから移植後のサイトへのリダイレクトはいつまで設定しておいた方が良いのかという目安ですが、GoogleのWebマスタートレンドアナリストであるジョン・ミューラー氏が「最低でも1年はリダイレクトの設定をしておいた方が良い」と発言しています。
If they’re no longer needed after a while (usually I recommend keeping them at least a year), and you don’t see traffic to them, then removing them is fine since it makes long-term maintenance easier.
— 🐄 John 🐄 (@JohnMu) January 18, 2019
移植元サイトのコンテンツは徐々に検索時に表示されなくなっていくので、そこからリダイレクトで移植後のサイトにアクセスしてくるユーザーも減ってきます。
リダイレクトに効果があるのはリダイレクトが有効な期間のみであり、検索結果に表示されなくなって、アクセスするユーザーもいないのであれば、自ずとリダイレクトの効果もなくなります。
もし1年経っても移植元サイトにアクセスするユーザーが多いようであれば、リダイレクト設定は残しておいて良いかもしれませんが、その分管理も必要になるので、1年後にはリダイレクトを解除した方が後々楽になると思われます。
そのほかにもコンテンツに別ページへの内部リンクを設定していた場合には、改めて統合後のサイトで該当するページへのリンクに修正するか、削除しておく必要があります。
正しいリンク設定がされていないと、内部リンクに関するエラーで評価が下がる恐れがあるので、注意しましょう。
サイト統合には丁寧な作業と入念な準備が必要
サイトを統合することは大仕事ではあるものの、その分だけさまざまなメリットも存在します。
しかし、ただコンテンツを移しただけでは、逆にデメリットしか得られなかったという結果になることも否定できません。
そうならないためには、まず統合後のサイトをどのような構造にするのかを明確にし、何を目的とした統合なのかを決めておいた方が良いでしょう。
そして、作業量も非常に多くなりますが、リダイレクト漏れや重複したコンテンツを残したままにしておくなど、細かなミスでも避けなければいけません。
サイトを統合する際にはしっかりと準備を整えたうえで、丁寧に進行できるように余裕を持ったスケジュールで進めていくことをおすすめします。
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